PENs Note

心理学と小説と。

今週の、800文字の、おはなし。

ニホンカワウソ

 

「…じゃあ、ソフトクリーム!」

「ムネフサハワイミツスイ」

「なんだいそれ。 …イカ飯!」

「シマハヤブサ

「サ!? うーん…」

 

しばらく黙り込んだ僕に、君が困った顔で聞いてくる。

「…もしかして、好きな食べ物の話してる?」

 

確かに、ソフトクリームもイカ飯も好きだ。

カレーも好きだし、ホットケーキも。お寿司も好きだし…

「あ!! サシミ!!!」

「やっぱり。そういうと思った。」

「君こそ、よくわからないカタカナばっかり使ってないで、もうちょっと僕のわかる言葉にしてくれよ。じゃないと面白くないだろう?」

 

そんな僕の言葉なんか関係なく、全く一方通行のキャッチボールが続いていく。

ミカヅキツメオワラビー」

「またか。しかしよくもそんなに、意味のわからないものを知ってるね。」

「あなたと違って本が好きなの。 で?」

「で?? あぁ、ちょっと待ってくれよ… ビビンバ!」

「あなたこそ、よくそんなに食べたいものがあるわね。 バライロガモ」

 

「いや。バ… 何て?」

「バライロガモ」

「次は、モ?」

 

僕はまたうーんとか唸りながら考え始めた。

「…君には敵わないなぁ。今度その本とやらを読ませてくれよ、それからもう一度勝負しよう。」

「いいけど。でもそんなこと言って、まだ勝負はついていないじゃない。」

「でもなぁ… 何言っても君には勝てっこないからなぁ。」

 

「うーん… モ、なぁ… モア…モイ…モウ…」

しらみつぶし大作戦を決行している僕の前で、君は何やら遊んでいる。

 

「なにか楽しそうなことしてるね。もしかして、僕が弱すぎて勝負にならないって?」

「え、何って。ヒントあげてるのもわからない?」

 

そんなヒントって… 

ただほっぺたを膨らまして…あ。

「もしかして、『もち』って伝えたいの?」

「なんだ、やればできるじゃない。じゃあ私の番ね。」

 

「チキュウ」

「ウ… あ、ウニ!」

「ふふ。ニンゲン」

 

 

今週のお題「復活してほしいもの」